breath
「毎年、記念日にここに来たいと思っている」
「そうですね。私も来たいです」
並んでソファーに座っていたので、私は甘えるように樹の肩にコツンと頭をのせる
樹は私の右手をギュット握り、夜景を見ていた顔を私の方に向けた
重なる視線
私は目を背ける事ができず、真っ直ぐ彼の顔を見る
引き込まれそうな、黒い瞳
彼が私に対して何が言いたいのか何となくわかるけど、あえてわからない振りをする
だって、樹の口から・・・樹の声で聞きたい
贅沢かもしれないけど
「愛してる・・・」
樹はそう言い抱きしめる
樹の胸に顔を埋めながら『私も・・・』と自分の気持ちを素直に伝える
樹に何度も抱きしめられているのに、今日はいつもと違い胸がドキドキ

長い抱擁
どうしたのだろう?
樹は何かを考えているのか、目を閉じながら思いにふけっている
私は樹の胸の中で、彼の匂いに包まれほわほわした気分になっている
しばらくして「明日美」っていう言葉が頭の上から降って来たので、顔を上げると樹が優しく私に向かって微笑んでいる顔があり、チュッて軽く樹の唇に軽いキス
唇が離れた時、樹と視線が合う
「愛してる」
「ありがとう。俺もだよ」
唇をゆっくり重ねる
今までしたことのないようなキス
ただ重ねているだけなのに、熱い気持ちが伝わってくる
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