大事にされたいのは君

「ほら、前めっちゃ仲よかったじゃん?でも最近そうでもないし、ぶっちゃけ不仲説出てるし?実際どーなのかなって」なんて、悪びれも無く彼女は言う。仲良くしてくれる人達にもここまでストレートに言われた事は無かった。

「もしあたしが付き合ったとしても、問題無いよね?」

「……うん」

小さく頷いた私を確認した彼女は嬉しそうに微笑んで、用は済んだとばかりにあっさりと去って行った。…問題あるか、なんて、無いとしか答えられない。だって私はただの友達。嫌だなんて、私のそんな気持ちは彼女と瀬良君の間には関係無い。割り込む資格も手段も無い。

ーー『俺に他に大事な人が出来ても?』

過去に彼から問われたそれに、瀬良君が幸せならそれでいいと、私は答えた。よくそんな事を言えたものだ。自分の気持ちを自覚してからどんどん間違った方へと向かっている気がする。何も知らない私は綺麗な気持ちでいられたのに、知ってしまった私は汚く汚れていくばかり。

きっと、そういう汚い気持ちを恋というのだ。それまでの私は恋をしていなかったから分からなかった。束縛するのはきっと、その人に恋をしているから。だってその人の全てが私の元にあって欲しい。その人には私の事だけを考えて欲しい。だから彼氏という名前を彼につけて、彼女だからという理由を私に作りたくて、付き合いたいと思うのだ。大切に思う気持ちは同じなのに、何故こんなにも違うのだろう。

きっと瀬良君は気づいたのだろう、私の気持ちに。だから私を避けるようになって、それなのに今、友達としてやり直そうとする私を許してくれたのだ。朋花ちゃんにバレてしまったのだから、あの瀬良君が気づいていない訳が無い。もう、これ以上求めてはいけない。迷惑なだけだ。きっとあの子は瀬良君に告白するのだろう。彼女の瀬良君になったその時、私は瀬良君と上手く友達でいられる自信がない。

諦めよう…元から私には勿体ない人だったのだから。もう、やめよう。
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