大事にされたいのは君

『寂しいんだね』

それは、今この場で投げかけられるとは思いもしなかった言葉だった。でもその言葉は私の心にそっと寄り添い、染み込んでいく。

「……寂しい…んだと、思う」

そっか、寂しいんだ。羨ましく思う分だけ、寂しく感じている。私もそうなりたいと願っているはず。

…でも。

「だからって、私は私を変えられない。だから、仕方がない」

そう。私は変えられない…というか、変えようとは思っていない。本当だったらその手段もあったはずなのだ。でもしない。君のようにはなれない。

自分から飛び込んでいく事もせずに守りを固めている私がいけない。もとから人に好かれる人と好かれない人が居るのは仕方がない事、なんて思わずに抗えばいい。好かれる努力をすれば良い。だけどそれが上手く出来ない。あからさまに拒絶されるのが怖い。だったら少し距離を感じても程々に接してもらえる今のままの方が良いなんて、傷付かないように逃げている私に“寂しい”なんて言う資格はない。彼に嫉妬する権利なんてもっと無い。

「君はすごいね。君は、自分を変えようとしてるんだもんね」

諦めないで、何とかならないかと方法を探している。その為に仲良くもない私ともこうやって話をするようになったりして、また彼の世界は一つ大きく、一つ新しくなっていく。

「そんな君が寂しく感じる時があるんだから、私が寂しく無い訳がないよ」

瀬良君の輝かしさを感じる程にどんよりと濃くなる私の心。そんなやたらと暗く落ち込んだ、淀んでいるようにも感じる私の空気を場違いの明るい声が制した。

「なーんだ!もっと早く言ってくれれば良かったのに」

自分の中を覗き込むように視界に意識が回って無かった私は、その声にハッと引き上げられる。顔を上げるとやっぱり、キラキラと輝く笑顔がそこにはあった。

「じゃあ俺の一番になってよ」

「…え?」
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