大事にされたいのは君
兄の住むマンションは2LDK。ただの男の一人暮らしにしては広めだと思っていたけれど、彼女と同棲するつもりだったと聞かされた今なら納得出来た。そのせいで私が来る事になってしまった訳だから良かったのか悪かったのかは分からないけれど、今は一部屋ずつ私室を持てて丁度良い生活を送らせて貰っている。
「それ夕飯の買い物?」
私の持つスーパーのビニール袋を兄が指差すので、私は頷いた。
「これから作るんだけど、ちゃんと瀬良君のうちで冷蔵庫に入れて貰ってたから大丈夫だよ」
「おまえもう家行く仲なの?」
あのおまえが?まさか何も無いよな?と、声に出さずして訴えかけてくる兄に、もちろんだと何度も頷いた。
「家に行ったのも今日が初めてだから。行く予定じゃなかったから買い物した後だったんだけど、すぐ夕飯のだって気付いてくれてね。冷蔵庫貸してくれたの。紅茶出してくれたりすごく気遣ってくれてね、」
「それ本当に高二男子かよ」
「…あー…瀬良君は料理が得意で…」
「俺、ほぼ一人暮らしなんで」
口を開いた瀬良君に、私達の視線が集中する。ジッと見つめる兄は無表情で、それとは正反対に人の良さそうな笑顔を浮かべる瀬良君が、どういう気持ちでそんな言葉を口にしたのかが私には分からなかった。一人暮らしだなんて言ったら兄の警戒が強まるだけな気がするのに。瀬良君はそういう印象操作に関しては鈍くないタイプだったはず。
「親は?」
「月末の夕食だけうちに。普段は仕事の都合上別に住んでます。だから吉岡さんの手伝いなら任せて下さい」
「……」