大事にされたいのは君
「…周りを受け付けないんじゃなくて、受け入れ方が分からないだけなの。傷つきたくなくて守ってるうちに分からなくなって…嫌ってなんてないのに、自分を守ってるうちに私は、線を引いて、た」
「吉岡さん」
「それで私は嫌っていると勘違いまでさせてしまって、もしかしたら今までにも傷ついた人がいるかもしれない。私がそうだったみたいに、私が勝手に傷付いていたみたいに、」
「吉岡さん」
ジッと、真っ直ぐ私だけを映す瞳に呼び止められて、思考の海に飲み込まれていく意識をハッと引き上げられた。
彼は変わらず私に注目していた。何も変わらない、私の話をそのどこに響かせたのかも分からない表情で、私にだけ届かせる言葉で私に言った。
「俺は別に傷ついてない。でも、吉岡さんは傷ついてたんだね」
そんな事思いもしなかったと、彼はポツリと呟いた。そして、
「吉岡さんは、みんなと仲良くなりたいんだ」
確信を持ったように、彼は告げた。それはとても簡単な言葉だった。ただそれだけの言葉で足りる話だった。静かに頷く私を確認すると、「じゃあ今日はみんなで昼食べよう」なんて、平坦な声で私に提案した。
私はまたそれに頷いて、それからそっと目を逸らしてぎゅっと固く口を噤んだ。ーーもう、とにかく恥ずかしかった。全てが落ち着いた途端に恥ずかしくて居た堪れなかった。何を一人でヒートアップしているのだと。何のスイッチを入れているのだと。どれだけ情けない姿を晒したのかを考えるだけで、とにかくがむしゃらに走り去りたくなった。
そのまま三人で教室まで向かった訳だけれど、その間私は地獄のような時間を過ごした。誰一人として口を開かず、誰の表情も確認出来ないままひたすらに歩いた。もう置いていって欲しいと思うのに、せめて二人は別の話でもしていてくれと願うのに、気遣ってくれていたのか、あるいはそんな気分になる空気では無かったからなのか、割と空気を読まない二人だと思っていたのに、この時ばかりは何故か自分本意に動いてくれなかった。