Vanilla
朝永さんの声に振り向くと、何故か試着室を出たすぐ下の床には少しヒールのついたグレーの可愛らしい靴が置かれていた。


「履け。スニーカーじゃ、合わねぇから」

ちょっと待って。
更に出費させる気!?

これ以上の出費は無理!!!


「足、出せ」

あぐねいていたら、床に片膝をひざまづいて私の片足を要求する朝永さん。

絵本の中だと素敵なシチュエーションだろう。

でも今の私達は真逆だから。

苛々している御主人様に、身の丈に合わない服を強制的に買わされそうになり、怯えている奴隷の姿だから。

たった今、痺れを切らした私の右足を強引に引っ張って履かせている朝永さんの姿を見ればお分かり頂けるだろう。
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