Vanilla
少しだけホッとしたが、依然重い腰を上げて、真新しい靴に足を入れる。

「本当にお似合いですよ。またのお越しをお待ちしております」

近くに居た店員さんに深々と頭を下げられた。

「……ありがとうございます」

なんとか返すが、引き攣った笑顔になってしまう私。

靴、幾らするだろう……。
何を節約していこう……。

肩を落とし、俯きながらトボトボとレジへと向かう。


「さっさとしろ」

レジの手前、そこに飛んできた朝永さんからの催促のお声に思わず顔を上げた。

ちんたら歩いている私に苛々したんでしょうね。

私はもっと苛々してますけど!?

平然としている涼しげな顔に反論してやりたい。
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