Vanilla
「だってそれまで口すら聞いたこと無いんでしょ?そんな人に突然恋人役を頼む?一緒に住める?見ず知らずに近い人間と」

た、確かに、

「そうかも、しれない……」

数秒前まで絶望の淵に居たが、愛佳ちゃんの言葉に少し軽くなり、私は納得して頷いた。

「実はずっと朝永さんはつぐみを見てたんだよー!」

興奮する愛佳ちゃんに、私は疑心暗鬼の部分も隠せない。

でも愛佳ちゃんの言うことも一理ある。
見ず知らずの女を家に入れる?


……私を拾ってくれたこと……期待しても良いの……?



休憩後、愛佳ちゃんが話を聞いてくれたお陰で朝より断然に仕事は捗った。

恋だと分かった今、私はどうして良いのか分からない。
元々自分は奥手だし、両親が亡くなった事で恋愛をしている余裕も暇も無かった。
学生時代に気になる男の子をただ眺めているだけの恋しか経験していないのだ。

私のこの恋は、どうなっていくのだろうか……。
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