Vanilla
歩きながら今日も感じる視線。
でも今日は繋がる手にいつも以上にドキドキする。
離して欲しくない。
そんなことばかり考えてしまう。
電車に乗ると、このまま降りたくないなんて馬鹿なことまで思う。
だっていつもマンションの最寄駅に着いたら朝永さんは私から手を離してしまうから。

そして最寄駅に着いた瞬間にやっぱり離れていった手。
まだ繋ぎたかったと寂しさしか感じない自分に、やっぱり朝永さんに恋に落ちていると気付かされるのと同時に、あっさり離せた朝永さんはやっぱり私に興味なんてないことにも気付かされる。

スーパーに入ると朝永さんは今日もカゴを持ってくれて、レジでは半分お金を出してくれた。
そんな朝永さんにまだ私に望みあるのかななんて考える。

今日一日、私の思考回路は朝永さんに振り回されっぱなしだ。


家に着くと私はいつも通り家事にとりかかる。
こんな状況だけれど、好きな人のお世話が出来るなんて嬉しいこと。
昨日まではつまらない作業のようにやっていたことが、楽しいことに変わっている。
< 174 / 566 >

この作品をシェア

pagetop