Vanilla
「これ以上、好きになったら辛いもん……」

最近の朝永さん、その気なんて更々ないくせに私を益々好きにさせることしかしてこない。
今動かないとこの気持ちから逃げられなくなる。


「つぐみちゃーん、おはよ!」

そこに穂香さんがご機嫌な様子でやって来た。

「今日は朝永君に何してあげるの?」

唐突にワケの分からないことを言われて、「え?」と呟きながら頭の上に疑問符を浮かべる私。


「あれ?つぐみちゃん、知らない?今日朝永君の誕生日らしいよ?女の子達が喋ってたから」

朝永さんは名前に秋の字が入っていたななんて今更思い出す。

誕生日って女の子には特別な日だ。
でも朝永さんって誕生日なんてどうでも良いなんて寂しいことを平気で言いそう。

朝永さんに心を簡単に動かされる私。
家を出ようと考えていたのに……。


「どーするの?つぐみちゃん?」

反応しない私の脇腹に肘でツンツンさせながらニヤニヤし始めた愛佳ちゃん。
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