Vanilla
私は静かに食べ続けている朝永さんをたまにチラチラ見て、目に焼き付けていたらバチリと目が合って。

「おかわり」

ビクッとなる寸前に飛んできた言葉。

「はいっ」

頬が緩んだまま、お皿を持ってキッチンに駆け込む。

作って良かった。
喜んでくれて良かった……。


おかわりをした後、朝永さんは綺麗に全部さらえてくれた。
朝永さんのご馳走様を聞いた私は立ち上がろうとした朝永さんを引き留める。

「まだ座っていて下さいっ」

最後のデザートもあるから。

私はシンクにお皿を片付けると、少しのインスタントコーヒーをサッと作り、冷蔵庫からケーキの箱を取り出してお皿に乗せた。


「お誕生日おめでとうございます」

「俺、子供かよ……」

コーヒーとケーキをテーブルに置くと、ケーキを見たまま朝永さんが照れた表情で呟いた。
< 276 / 566 >

この作品をシェア

pagetop