Vanilla
ロウソクまではしなかったが、直径十五センチ程の小さめの円形のチーズケーキに『誕生日おめでとうございます』とチョコペンで書かれた白いチョコのプレートを乗せてもらった。
チーズケーキにしたのは、生クリームとかチョコが苦手な男性が多いと思ったから。

「もうすぐ出て行きますし、お世話になっているお礼です」

座らず立ったまま笑顔を作って、朝永さんにフォークを差し出した。


昨日ケーキを誰かと食べたかもしれない。
チーズケーキが苦手かもしれない。
なんて不安な事しか過ぎらないから。

すぐに出したフォークをすぐに掴んでくれてホッとした。

「お前の分は?」

フォークを掴んだ直後訊かれた。

「私のは無いです。だって朝永さんのお誕生日ですから」

私は両手を横に振る。

ケーキはスマホで調べて有名店のものを買いに行った。
実は一つで二千円もする。
一つだけしか買わないのは失礼かと思ったが、流石に高くて自分の分を買えなかった。
だってこれからお金は沢山必要になる。
家具やら家電やらまた買い揃えないといけないんだもの。
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