Vanilla
名前を呼ばれるとガタンと椅子が動いた音が聞こえたかと思ったら両頬を掴まれて。

何事かと思ったら次の瞬間、唇に生温かい感触。


「んぅ!?」


目を見開いたら、何かが唇の間を割り入ってきた。

濃厚なチーズと甘い味を感じたところで、朝永さんの左目の涙ボクロが目の前に見えた。


「お前が食べないから」

朝永さんは意地悪そうな顔で口の端を上げながら、舌舐めずり。


「美味い?」

そして少し小首を傾げて楽しげな顔で問い掛けてきた。

私は思わず俯いた。


口移しで食べさせるなんて、何考えてるの?

この人にはきっと何ともない行為。

何にも考えてないよね。
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