Vanilla
「つぐみ?」

何で名前を呼ぶの?

私に興味なんてないくせに。

昨日だって帰って来なかったじゃない。


「名前を呼ばないで」

自分の口から出たとは思えない低い声が出た。

心の中がぐちゃぐちゃなせいで、涙が込み上げて溢れてきた。


「泣いてんのか?」

頭上に聞こえてきた焦りもしない声に苛々する。

私のことなんて好きじゃないでしょ、スルーして。

そう念じているのに、朝永さんの手が視界に入り込んできて。

私はその手を勢いよく弾き落とした。


「触らないでっ!」

これ以上は我慢出来ない。

どうせまた気分だとか言うんでしょ?

涙は止めどなく溢れて頬を伝っている。


「もう、振り回されたくないっ!」


でも私、もう、心が限界なの。
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