Vanilla
すると触れるだけのキスが変わった。

涙の跡を消すように唇が滑り落ち、首筋に辿り着くと生温かい唇と舌が艶かしく這って。

肌に掛かる吐息とキスに、私の息が上がる。

ぞわぞわして身を捩ると、変な声が喉に込み上げてきて。

こんな感覚を感じたことがなくて怖くなった私は、目をギュッと瞑りながら口を慌てて両手で押さえる。

が、手が口から離れていった。

離された、が正しい。

朝永さんが私の両手首を捕まえて壁につけたから。


「や、止めて……離して……」

私は朝永さんを直視出来なくて、斜め下を向いたまま呟く。
ドキドキのしすぎで唇がぷるぷる震えた。


「キスしたい」

そこに耳元で再び囁かれた言葉。

甘い誘惑と耳の鼓膜を擽る吐息。

ゾワリとして、身体がビクッと反応する。
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