Vanilla
耳元から一瞬で全身に熱が広がる。

心臓は感じたことのないスピードを出している。

口から飛び出そうなくらいに。

頭は一気にクラクラだ。

でも絶対頷くもんか。

だってどうせ今日も気分だ。

私が口を真一文字にしてそっぽを向き続けていると、両手首がパッと解放された。

諦めてくれた?

だが安堵させてもらえずに身体を竦めた。

朝永さんに再び両頬を掴まれたから。

そして強引に朝永さんの方へと向かされる。


『コツン』

私のおでこに自分のおでこをつけると私を真っ直ぐ見つめてきた。

至近距離にドキっとして心臓が更に大きく飛び跳ねている。


「つぐみ」

再び名前まで囁いてきた。

心臓は最大速度をどんどん上げる。
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