Vanilla
熱い瞳に見えるのは、甘く聞こえるのは、私の勘違いだ。

心臓が馬鹿みたいに煩いせいで、血迷っているだけだ。

その時、思った。

きっと男性の生理的現象だと。

絶対そうに違いない。

朝永さんは簡単に抱けちゃう人なんだ。

逃げたい。

でも逃げられない。

壁に追い詰められているし、両頬を掴まれているせいで、身体も顔も動かせない。

そう思った私は視線だけでも逃げた。


「じゃあ勝手にする」

「え」


呟きのような小さな声に驚いた私の言葉は朝永さんの口の中に消えていった。

朝永さんが唇にキスをしてきたから。

すぐに私の口の中に自分の舌を押し込む。
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