Vanilla
だってしー君に朝永さんの話をしたことがない、というか出来るわけがない。
今、彼氏でもない男の人と住んで…いや、奴隷にされていますだなんて!

朝永さんのことは、バレてはいけない!


「しー君、すぐ行く!」

焦った私はしー君に声をかけるとしー君に背を向け、

「朝永さん、夕飯作れなくてすいません!それじゃあ!」

しー君には聞こえないように口に手を当て、小声の早口で謝ると速攻で電話を切った。

「ごめん、お待たせっ」

慌てて笑顔を張り付けて振り返ると、しー君の横には六十代くらいの男性が。

彼は寮監さんで、緊急事態という事で一日泊めてくれる許可をくれた。
ここは男子寮、誰かに見られると騒ぎになるかもしれないからと静かにしていることが条件で。

すぐにしー君の部屋に向かった。
しー君の部屋は八畳程。
二段ベッドの下が勉強机になっていて、一応プライバシーを保てるように囲えるカーテンがついている。
それが二つあるが一つは持ち主不在のため、空っぽ。
また切なくなった。
あとは二つのクローゼットとトイレが付いた洗面所。
狭い部屋で頑張ってくれていると思ったと、私ももっと頑張らねばと思った。
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