Vanilla
服が濡れているから、しー君のTシャツとハーフパンツを借りた。
朝永さんとは違う香りを感じると、朝永さんが恋しくなって、自分がバカな女だとつくづく思った。

濡れたワンピースはしー君が寮の洗濯機に入れてきた。
終わったら乾燥機に入れてくれるから明日はそれを着て帰れることに安心した。
マットレスだけのベッドに寮母さんがシーツと布団を持ってきてくれた。
夜ご飯も提供してもらい、しー君と二人で部屋で食べた。
お風呂は学生用のお風呂に入れるわけがないからと寮監さん用のお風呂を勧められたが、ご飯まで出してもらったし、男子寮を歩きにくいし、それに一日だけだしと断った。
しー君は「雨に打たれたから温まらないと風邪ひくぞ」と心配してくれたけれど。


「つぐみと寝るの、久しぶり」

一メートル程向こうのから、しー君の声が飛んできた。

「そうだね。っていっても、十二歳の時には私は一人部屋だったよ」

「一つ屋根の下って意味」

「そういうことね」
< 399 / 566 >

この作品をシェア

pagetop