Vanilla
今日も有給を使ってしまった。
でも全てを知っていて、穂香さんの婚約パーティーに行けるはずがない。
祝えるはずがない。

今日も私は携帯を切りっぱなし。
今から月曜日が不安になる。
愛佳ちゃんにも何にも言っていないしね。

伊藤さんは二人のこと、知っているのかな……。
伊藤さんには知る権利はある。
でも、私には、言えないよ……。

二人の関係に気付いてから、ずっとこの永遠ループ。

一先ず今日もアパート探しに行こう。


だが今日もアパートを見つけられなかった。
朝永さんの好条件のマンションに住んでしまったせいだ。
でも日曜日までには絶対決めないと。
あと、今日の夜はどうしよう。
流石にこのまま漫喫暮らしは身体にキツい。
家賃よりかは安いが薄い板で隣と区切られているだけだし、板の上は隙間があるから密室じゃなくて人の気配を感じる空間だし、ソファーで眠っているからゆっくり身体が休めない。

時計を確認すると夜の七時十五分。
会社は土日は施錠される。
会社は無理だ。
日曜日までは此所に居るしかないか……。

気持ちを切り替えよう。
シャワーを浴びてこようと貴重品の入ったバッグのショルダーを肩から掛けると個室の扉を開けた。


「携帯の電源切りっぱなしにするとは良い度胸してんな」
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