Vanilla
一つは私のだ。
一つは朝永さんが持っていたようだ。
朝永さんは私の紙袋だけ取った。

床に残された朝永さんの紙袋には、何が入っているの?


「貴女が買ったこの食器、処分しといて。もう要らないから」

朝永さんの言葉に目を見開くしかない。

だって中身があのペアの食器だなんて思わない。


「俺の他にも遊び相手居たみたいだし。アイツとか」

そう言って突然左手で一人の男性を指差した朝永さん。

指の先の男性は目を見開いて固まっている。


「それでも伊藤さんが良いなら引き止めないけど。じゃ失礼します」

目の前の朝永さんが頭をペコッと軽く下げると私へと振り向いた。


「つぐみ、帰るぞ」

目が合うと無表情で私にサラッと言う朝永さん。
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