君を借りてもいいですか?
湊人の姿が見えなくなると大きく息を吐いた。

何やってんの私は…相手が求めているのは偽の恋人でしょ?

ときめいてどうすんのよ。

どんな無茶振りにも応えてこその恋人役じゃない。役に徹してトキメキが欲しいなら小説の中で十分。
しかし、結女花さんが湊人を好きなっちゃう気持ち、わからないでもない。

あんなイケメンにニコッと微笑まれたら女子はときめいちゃうよ。

私ななんとか犬にたとえて乗り越えたけど、一緒にいるだけで罪な人を初めて見た気がする。

あ〜心臓に悪いわ。

でも、具体的にどうやって諦めさせるんだろう。

優しい顔してるけど手段は選ばないところもあるし…そう思いながら私は夜空を眺めため息をついた。


「あ〜いい湯だった」

湊人が首にタオルをかけ、浴衣姿でやってきた。
完全に乾ききってない髪の毛は無造作。胸元がチラリと見える浴衣姿は色気を感じる。

男の人の湯上がり姿がこんなにかっこいいなんて。

これで窓辺の一人掛けの椅子に足を組んで座って腕を組みながら外を見たりなんかしたら!!

頭の中は妄想で悶々していた。

「栞?…栞?」

「はっ?」

「心ここに在らずだけどどうかした?」

まさか妄想していたなんていえるわけがない。

「な、なんでもないよ」

「…ならいいけど…それよりもう遅いから寝ない?」
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