きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
「きみに本当のことを言わなかったのは……悪かったと思ってる」
搾り出すような声で、シンちゃんは呻いた。
「だけど、入社して真っ先に配属されたのが営業部だったし、専務となった今でも営業本部を統括する責任者だから、まだ自分では『営業マンの端くれ』だと思っているよ。
……『初心』を忘れないためにも、総務に無理を言って、初めてもらった社員証を返却せずにいつも持ち歩いてるしね」
それが、あの「社員証」だったのだ。
「でも、さすがに新卒の頃の写真は若いからね。バレるといけないから、指で押さえて見せないでいたのに気づかなかった?」
シンちゃんは自分を嘲るように苦笑した。
「ねぇ……櫻子……」
不意に名前を呼ばれて、シンちゃんを見上げる。