きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜

「店では、そんな細い方のリングでよかったのかな?って思ったけど、櫻子さんは華奢な指だから、その細さがよく似合ってるね。二人ともぴったりのサイズが店内にあって、ラッキーだったしね」

葛城さんは目を細めて微笑んだ。

ほんの少しだけ、目尻にシワが出る。
なのに、セクシーに見えるのが不思議だ。
イケメンは得だなぁと思わずにいられない。

わたしのは、二・五ミリの一番細いタイプだ。
それに対して葛城さんは三・五ミリの少し太いタイプだった。男の人の手にはこのくらいの太さの方が落ち着く。

「さすがカルティエだねぇ。三色のゴールドなのに、全然派手な感じがなくて、しっくりと肌に馴染(なじ)む」

わたしも肯いた。確かにそうだった。

「もともと、日本人などの肌の色は白っぽいプラチナよりもゴールドの方が合ってるのかもしれませんね。それに、ゴールドは軽くて、つけ心地がいいですね」

たまたまぱっと目についたものだったが、このリングにして正解だったと思う。

「うん、僕は指輪なんて普段つけないけど、これならずっとつけてても気にならないから大丈夫だな」

葛城さんは細長くて少し筋張った指を持つ大きな手を、グーにしたりパーにしたりしながら言った。

「……もしかして、葛城さんも普段からつけるんですか?しかも、左手薬指に?」

「そうだよ」

わたしの問いかけに、葛城さんは平然と答えた。

「僕は櫻子さんの『結婚相手』だからね。
……それに、僕の方にもちゃんと『メリット』になるから気にしなくていいよ。
実は、ウィンウィンなんだ。でないと、いくら僕だってこんなことしないよ」

葛城さんはさらに目を細めて笑った。

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