きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
葛城さんはきっと、お仕事の上でも優秀な営業マンに違いない。
だって、美味しいスープハンバーグを堪能しているうちに、わたしは目下の懸案の「ストーカー疑惑」から「最果ての地への島流し」のこと、そして自らの生い立ちのことなど、すっかりしゃべってしまったのだから。
……この人見知りのわたしが。
葛城さんが文具メーカーの社員でよかった。
でなかったら、わたしは彼から、高額な(でも実は二束三文な)宝石だの着物だの美容器具だのを一切合切買わされていたはずだ。
だけど……今のわたしなら。
葛城さんが売りつけるのであれば、年に一度も使うかどうかわからないのに、何万もするような職人さん手づくりの「匠」な万年筆を、何の躊躇いもなく何本も買うだろう。