きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
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結局、うちまで、葛城さんはわたしを送ってくれることになった。

JRの常磐線の駅を降りてからは自転車だ。

葛城さんは、駐輪場でわたしの赤いママチャリのサドルのレバーを引っ張って引き出し、ぐるぐるぐるっと回して、サドルを上げた。

そして、「ほんとは道路交通法違反なんだけどね」といたずらっぽく笑って、

「後ろに乗って。僕が自転車を漕ぐから。あ、櫻子さんの家までの道、教えてね」

わたしのママチャリにまたがった。


それから、わたしたちは、まるで高校生の下校時のように、自転車を二人乗りして家まで帰ってきた。

もうすっかり夜の(とばり)が下りていた。
だからわたしは、ご近所の目を気にすることなく、自転車の荷台に横乗りした。

青春真っただ中のウブな女子高生みたいに俯いて、葛城さんのスーツの上着の端を掴むわたしに、

「……櫻子さん、もっとしっかりと持たないと、振り下ろされちゃうよ?」

自転車を軽快に漕ぐ葛城さんが、前を向いたまま笑って言った。


……彼の背中から、(じか)に声が聞こえてきたような気がした。

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