きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
……ところが。
こんな時間にもかかわらず、お隣の山田のおばちゃんの門扉の前に、裏の中村のおばちゃんがやって来ていたのだ。
いい歳して自転車で二人乗りして帰ってきたわたしたちの姿を見て、門灯に照らされたおばちゃんたちの目が、夜目にもらんらんと光り輝いているのがわかった。
「……あらぁっ、櫻子ちゃんっ、おかえりなさいっ!」
山田のおばちゃんが、ご近所一円に聞こえるんじゃないかと思えるほどの声を張り上げた。
「たっ…ただいま……」
わたしは顔を引き攣らせながら応じた。