マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様
「信号、青になったよ。行こう」
そう言われて、ハッと我に返る。
と、同時にサッと右手を引かれる。
自然に手を繋いでしまった。
蓑島くんに手を繋がれたまま横断歩道を渡り、手を引かれるまま、誘導されるかのようにバス停へと向かう。
繋がれた手は、温かくて。
前と同じく、優しい温もりだった。
だけど、前と違うのは。
…この温もりが、今はちょっと切ない。
《…二人には、見えない『絆』っていうものがあるのは、百も承知なんだけどね?》
見えない『絆』って…何?
それは、理解出来ないようで。
でも、わかるような気もして。
…え?わかるような気が…するの?
何で?
この感覚はいったい…何?
「…あ。もうバス来るね」
蓑島くんは、バス停にある時刻表を覗き込んでいる。
私の手は離さず、繋いだまま。
「蓑島くん、今日は誘ってくれてありがとう」
改めてお礼を言うと、「ははっ」と笑っている。
ふぅ、と一息つくその笑顔はどこか寂しそうだった。
「…ホントは、まだ帰ってほしくなかったな、なんて」