王子様とブーランジェール
自分のことは置いといて、木元さんが話をまた戻す。
「しかし、その連れていかれた子、可哀想だな。狭山たちにどんな仕打ちを受けてるか…」
仕打ち?
俺は、エリが去り際に言っていたことをそのまま伝える。
「手は出さん!バカめ!…って言ってたから大丈夫じゃないですか」
木元さんは大きく手と首を横に振る。
「いやいやいや。竜堂、アイツらの恐ろしさをナメたらやられるぞ。何にもしませんっ!って、平気で蹴りの一発くらわす極悪非道な連中だぞ!」
「…え?」
「真っ裸にされて写真撮られて脅迫された女子もいる」
「ええっ!」
マッパにされて写真?!
それは、精神的社会的抹殺!
アイツの言葉を信じてしまったけど。
教室で平気で金属バットをブンブンと振り回す女だ。
それはリアルな話でもあるワケで。
し、しまった。
俺も理人同様、追い掛けて桃李を取り戻すべきだったかもしれない。
ここまで極悪非道な連中だったとは。
迂闊だった。
桃李がマッパの写真を撮られるかもしれない!
そう思ってしまうと。
アイツの言葉信じて、部活をしている場合じゃなかった…。
校舎の方をチラッと見る。
桃李、どこに連れていかれた?
今頃、どうなってる?
一気に不安にかられる。
木元さんはベンチに座って靴紐を結んでいる。
顔を上げず、そのまま話をしていた。
「お、そうだ竜堂」
「はい」
「嵐とヤッたの?」
「…はあぁっ?!」
またその話!この話の後に、急に振る?
…って、狭山エリの出現で、少し忘れかけていた。
そうだ。咲哉たちも知ってるんだ。
木元さんも知ってるのは間違いない…!
結構な噂になってるのか…。
俺のフリーズしたリアクションを見て、木元さんはウンウンと頷いた。
「可哀想に、竜堂。イケメン狩りに合っちまって」
「はあぁっ?!イケメン狩り?!」
「嵐はイケメン好きで有名なんだよ。イケメンというイケメン喰いまくる。おまえのブラザーズ、学校にいっぱいいるよ」
イケメン狩り、ブラザーズ…そんなに有名な女豹だったのか!
「な、な、何で早くそれを教えてくれないんですか!」
思わず声を張り上げてしまった。
木元さんは、苦笑いをしている。
「いやー。まさかこんなに早く嵐が一年生に手をつけるとは…」
「笑ってる場合じゃないでしょうが!あの件だって、俺、大河原さんに騙されて、大酒呑まされて潰されて…!」
決して。嵐さんのことを好きだったワケじゃない!
性欲には負けたけど…。(ここが問題)
そしたら、こんな罪悪感を抱えることもなかったのに…!