王子様とブーランジェール
「すみませんでした!」
優里マネに向かって、頭を深く下げる。
確かに、未成年だし、酒はマズイ。
表沙汰になったら、チームが出場停止になってしまうかもしれない。
酒の失態も多いし、いろんな意味で気をつけなければならなかった。
「後ね…竜堂くん、これからもこういうこと、あると思う」
「え?」
「この見た目でしょ?嵐だけじゃなくて、女はほっとかないと思うよ」
そう言って、俺の全身を上下に指差す。
「え…」
「入学してまだ2ヶ月しか経ってないけど、結構騒がれてるよ?『サッカー部の一年生に超絶カッコいいイケメンがいる』とかって。私も何人かにいろいろ聞かれたもん」
「はぁ…」
「『星天高校の新しい王子様』って、言われてるよ?」
「はぁ…」
王子様って…。
首を傾げる。
なぜ、俺がそんな風に噂されるのかまるでわからない。
俺より理人の方が塩顔でイケメンだと思うけど。
背も高いし、優しいし。
「あれ?自覚ないの?そのリアクション」
「まあ…」
「困ったわね。またやらかしそう」
優里マネの一言に、グサッときた。
またやらかしそうって…。
「だからこそ、よ。竜堂くん?」
そう言って、あの黒表紙の日誌で、今度は俺の背中をポンと叩いた。
「これからも、女性に言い寄られること、あるだろうから。私個人としては、あなたには毅然としていてほしい」
「毅然と…?」
「性欲や酒に負けるようじゃ、はっきり言って終わってる。カッコ悪い。遊び人のレッテルが付いちゃうわよ?」
またしてもグサッときた。
「優里マネ、パンチ重い…」
「そぉー?でもねぇー…」
グランドに落ちてる石を拾っている優里マネ。
何か、思い出しているかのよう。
「私、見てるんだ。卒業していった先輩の話なんだけど。イケメンすぎるんだけど、チャラ男すぎて。本当に好きな人が出来て、付き合うこともできたのはいいけど…もうすでに遊び人のレッテルが貼られちゃっていてね。周りから『すぐ別れる』とか、『彼女も遊びだ』とか、変な噂がたっちゃって、彼女に申し訳ないって悩んでた」
石を拾い終えて、こっちにやってくる。
「だから、竜堂くんにはそんな思いしてほしくないな。それが原因で、本当に好きな子に相手にされないとか、想いが伝わらないとか」
「優里マネ…」
ちょっと、ジーンときた。
ここまで考えてくれるとか。
さすが、年上の大人。
性欲や酒に負けるようじゃ、終わってる。
毅然と…か。