王子様とブーランジェール
「嫌だなって、その毒の吐き方、すぐ兄ちゃんだってわかるんだけど。それに顧問って何?」
『まあまあ。在学中はいろいろあったんだよ。今度話してやるよ。互いのクソ犬遊ばせながら』
「っつーか、まだポン太のこと虐待してんのかよ!玉ねぎ食わそうとするな!」
『あはは。虐待とか言うなよ』
パソコンを介して、ついいつもの口論になってしまう。
すると、狭山が間に入るようにパソコンを覗き込んだ。
「おい、おまえ。竜堂と知り合いなのか?」
『俺の唯一の女友達の弟。前に話したでしょ?』
「あー。あのドローン飛ばし大会の…」
『そうそう』
そういや、兄ちゃんは冬菜と仲良しだったな。
…いや、この人との縁はそれだけではない。
この人は、俺の人生のターニングポイントに大きく関わっていた人だったりする。
『夏輝…』
「…ん?」
『成長したな』
「…え?」
『さて、本当に前置きが長過ぎた。本当に本題に入ろう。菜月、頼む』
「………」
ガクッときたわ…。
「…はい。本日、ここに集まってもらったのは、昨夜メールでみんなに伝えた通り。我が校の新しいミスターを挑発して、男子生徒を襲撃するという事件についてです」
そこで、狭山がみんなの前に出る。
「…おまえら!ミスターが卒業式に私達に言い渡したミッションを覚えているか?!確認だ!」
すると、女子生徒たちは頷き合っている。
「狭山さん、わかってるよ!」
「『次代のミスターを守れ!』でしょ!」
「おう、そうだ。この事件は、新しいミスターを狙いその身を脅かす事件に値すると判断し、ミッションスタートとした。まず、そこに異存はないな?!」
狭山の問いかけに、周りは次々と口にする。
「もちろん!」
「異存なし!」
「なら良いぞ!バカめ!」
随分暑苦しくなってきたな。この家庭科室。
料理してるワケでもないのに。
「では、今一度事件の内容について説明します。事件のはじまりは約一週間前。我が校の生徒が学校帰りに一人でいるところを、複数の男性によって人目の付かない場所に連れて行かれ、集団リンチを受けるという、男の風上にもおけない卑劣な手口です。そして、リンチの後は決まって《ミスター出てこいや!》と書かれた紙切れを渡していき、それをミスターに渡すように告げて立ち去る…という事件です」