王子様とブーランジェール
改めて聞くと、ホントマジでムカッ腹立つな。
俺に出てこいと言いつつ、何の関係もない生徒らをボッコボコにしていくなんざ。
本当に卑劣だ。男の風上にもおけない。
すると、美梨也が「はいっ!」と手を挙げる。
喋る時、挙手しなきゃダメなの?
「えーと。被害件数は、総数ジャスト30件であります!」
「…は、はぁっ?!30?!」
ふ、増えてる!
俺が把握している数より!
「内訳は、『ボコられた後、正直にミスター竜堂に申告して紙切れを渡した者』20件。『ボコられたがミスター竜堂のことも恐れて言い出せなかった者』6件。『ボコられそうになったが返り討ちにした者』1件。『昨日新たにボコられた者』3件でござい!」
な、何だと!
俺を恐れて言い出せなかった…学祭のこと?
ちょっと傷ついた。
昨日新たにって…そういや、今日はボコ顔訪問者、一人もいなかった。
まさか、残党たちが先にリサーチしてたからか?
しかし、返り討ちにした者1名って…。
「ちなみに、返り討ちにしたのは、生徒会の二村ねー!」
「ちっ。あのメガネヤローか。やるな。元ヤンめ」
えっ!二村さん…あの、二村さん?!
しかも、元ヤン?!嘘っ!
あんな真面目そうに見えて…!
すると、松嶋が横で「やっぱり?どっかで見たことあると思ったんだよなー。あの生徒会の人」と、呟いていた。
マジか…!
元ヤン多くね?狭山は現役ヤンキーだと思われるが。
…だからか。
『…時に、竜堂。最近変わりはないか?』
事件のこと、わかってたワケか。
「しかし、この事件。不可解な点、難題がいくつもあります。まずは遭遇した時の現場。必ず地下鉄もしくはJRの駅を出たところを囲まれています。30件中28件が場所が違えど同じシチュエーションなんです。他2件は、昨日の高校付近での横川の件、あと星天公園内でも1件」
星天公園…高校の傍じゃねえか!
そんなところでも?!
「あと、犯人像がなかなか絞れません。聞き込みによりますと、加害者の年齢層はだいたい10代後半から20代前半。しかし、高校の制服だったり、私服だったりと様々です」
『…了解。ちょっと喋ってもいい?』
「はい。顧問、お願いします」
顧問、もとい酒屋の兄ちゃんの映っている手は、ポン太の頭を撫でていた。