王子様とブーランジェール
『片一方ではミスターを知らない、片一方ではミスター殺してやるって、言ってることが二分化されている。…そこで、君たちデビルの出番だ。…俺が、君たちに被害者に何を聞き込んで欲しいって言ったか覚えてる?』
すると、一人が「はいっ!」と挙手をした。
「加害者連中のより詳しい特徴、着ていた服、あと…紙切れを渡される際に、何を言われたか…ですよね?」
『そう、そこ。捨て台詞』
そこで、またしても美梨也が「はいっ!」と挙手をする。
警察ドラマで見る捜査会議そのものに見えてきた。
「そこで!またしても集計致しました!『ミスター殺してやる!』などの恨みつらみを述べた者、17件。『何か知らないけどこれ渡しとく』などの意味のわかってない者、13件となりました!」
俺への恨みつらみの方が、少し多いか。
ちっ。スケはこましてねえっつーの。今は。
『恐らく、これは情報が伝播している状況だ』
「伝播?」
『これはあくまでも俺の憶測なんだけど。例えば主犯格の連中がいて、襲撃の件数を増やしたいがために何も知らない知り合いに、星天の男子を襲撃するというゲームをやっていると持ちかける。それが伝言ゲームのようにどんどん伝わっていく。その結果、恨みつらみ連中と何も知らない連中に別れて襲撃が繰り返される、というカラクリだ』
なるほど。
それでどんどん兵隊が増えていき、この件数となったワケか。
理人の読み…当たったな。
『…なので、恐らくこの恨みつらみ連中が、主犯格だと考えられる。何も知らない連中はただの兵隊と考えるのが妥当だ。そういうワケで、この主犯格にスポットを充てよう』
すると三度、美梨也が挙手する。
『どうした美梨也?』
「顧問、あのですね?集計していてひとつ気になったことがあります!」
『何?』
「実はですね、恨みつらみ連中の犯行、17件中9件が9月13日に集中しております!随分極端だったので気になりました!以上!」
『わかった。どう繋がるかはわからないけど頭に入れておくよ』
そうだ。俺の誕生日の翌日、ボコ顔訪問者、たくさん来てたな…。
『この動画の連中は恐らく、主犯格に近い連中だと考えられる。その服装の特徴、多少着崩していてわからないけれど、モスグリーンのブレザーに、グレーのチェックのパンツの制服だ』
「これ、第二高校の制服じゃない?」
女子生徒の一人がタブレットを指差して言う。
だが、菜月は首を横に振る。
「一見、第二高校の制服に見えますが、ブレザーの色がこちらの方が多少薄く、エンブレムが違います。ここら辺では見たことのない制服です」