王子様とブーランジェール




…考えてみれば。

俺の最大の恋敵というやつは、理人なのかもしれない。

こいつと桃李、実はデキてるんじゃないか?

冷静になって考えても、そう思う。

ほら、さっきの会話もまるで初々しいカップルのようだ。

桃李も、理人にはビビってないし…。



何。この変な三角関係。





午後イチで決勝の試合があるため、咲哉や他の男子と早めの昼飯を教室で食べる。

なんとなく、午後からの試合の話をみんなでしながら。

「夏輝、午後の決勝も頼むなー」

「咲哉も本職じゃないけどキーパー頑張れ」

「いやー。それプレッシャー。あっちは本職で来るでしょ」

決勝の相手は3年5組。

先代キャプテン、蜂谷さんのいるクラス。

恐らく、本職である蜂谷さんがゴールを守るクラス…。

「え?マジ?サッカー部のキーパーさん?そりゃ厳しいでしょ!」

「だから、夏輝頼みだぜ?」

「ゴール固いな」



すると、先程ご活躍されたバレーボールのエースが教室に戻ってきた。



「あれ。もう昼飯?俺も食べよっかな」

「理人、さっきはお疲れー」



来た。来たぞ。

爽やかエース。



先程の桃李とのやり取りを思い出して、少しばかりかイラッとする。

応援聞こえたよ?ってか?

声も掛けずに、目の前の弁当を黙々と食べる。

だが、声を掛けないと用もないのに向こうからやってくる。



「夏輝、午後からの決勝頑張ってねー。俺達は3位だったけど」

「…うるせえ。来んな」

「………」



俺の反抗的な態度に、理人はシラッとした視線を送る。

その後に、ブッと吹き出して笑っていた。



「…え?何?ひょっとして、桃李が俺を応援してるの見てヤキモチ妬いてた?」

「………」



…なぜ、わかるんだ。



すると、隣に座ってくる。

やたらと距離が近い。



「心配するんじゃないよ。夏輝も『頑張ってー!』言ってもらえるから」

「心配なんかしてねえわ!バカか!」

ふざけるんじゃない。

そんなのにこだわってるとか、ダサすぎる。

…いや、おもいっきりこだわってるか。

ダサすぎる…。



「まあ、試合に押し掛ける夏輝のファンの量がすごすぎるから、いくらエール送っても聞こえないと思うけど」

「…そんなに?」

「え?気付かないの?」

「だって試合中はギャラリー気にしてねえし」

「じゃあ、ダメじゃん。そんなんなら嫉妬なんかするんじゃないよ」

「………」



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