王子様とブーランジェール
もう、放課後だよ。
…だなんてツッコミを心の中で入れてしまう。
しかし、心中のざわつきが治まらないので、進めるその足は急ぐ。
着替えずに学校ジャージのまま、向かった。
階段をワンフロア分降りて廊下に出る。
すると、家庭科室の前で狭山が腕を組んで立っていた。
「竜堂、来たか」
到着するなり偉そうに手招きされる。
家庭科室のドアを開けていた。
「呼び出して何の話だ」
「いいから入れ」
胸が気持ち悪い感じにざわつく。
何が起こっているのか、これからわかると思うと少しばかりか緊張してるのか。
しかし、中には意外な人物が待っていた。
「…は?おまえら…!」
家庭科室のテーブルのひとつを囲むように。
真ん中には、ノートパソコンを開いた菜月。
左には…藤ノ宮?!
そして、右には…。
「…おい!何でおまえがいるんだよ!…理人!」
真剣な面持ちの理人が、菜月の傍に立っている。
登場した俺を、シラッとした…冷たい目で見ているような気がする。
「律子同様、和田はさっきタイムリーに現場を見てしまったからな。そんな関係でここにいる」
ドアを閉めた狭山が、そう言いながらこっちにやってきた。
現場…?!
藤ノ宮同様って?
「…現場?って何だよ!」
傍にいた理人にずかずかと詰め寄る。
だが、理人の表情がいつもよりマジで、恐い雰囲気を出していて、いつもとは違う。
違和感だ。
「夏輝…」
「…あぁ?!」
「俺、ちょっとムカついてるよ?」
「はぁっ?!」
「もう、回りくどいのは得意じゃないから、率直に言う」
…そして、理人の口から聞かされるそのことに。
俺は、どん底に突き落とされることとなる。
それは、これからしばらく続く。
自分自身に不信感を持ち、自分自身を責め続ける。
『絶望』という名の地獄のどん底。
「…桃李、イジメられてるよ?…夏輝のせいで」
「…え?」
一瞬、何を言われているのか、わからなかった。
桃李が…?
イジメられてる…?
俺のせい…?
「…え?…え?え?」
ち、ちょっと待て。
どういうことだ?
頭の中が整理出来てない。
混乱している。
桃李が、俺のせいで?
え?何で?何でそんなことに?