王子様とブーランジェール
何の情報って?理人が言ったことそのまま…。
「ムカつく!…すっげぇムカつく!何そのボケ?マジな話をしてんのに、ボケいらないんだけど!」
…ボケ?!誰が…!
「ボケ…ボケてるつもりはねえ!」
「俺は『桃李にとって夏輝は一番だからな』って言ったのに、何が恐い男だよ!どこから出てきた恐い男!」
「それは、話の流れ…えっ」
間違いに気付いて、急に勢い死んだ。
桃李にとって、夏輝は一番。
…ホントだ。恐い男、出て来てない。
しかし、恐い男よりも重大事項に気付いてしまった。
心臓、口から飛び出るくらい、ヤバい事項。
「い、一番って…何の一番?」
俺、桃李の一番?
何の一番?
俺、桃李の一番になれる何か、あったっけ?
もしや。それは…。
…あぁっ!
気付いてしまったら、一気に照れが襲ってきた。
「ち、ちょっと…」
「…その様子だと、気付いてんだろが…ボケはいらねえぞ?」
「一番くじクラブとか、さっぽろ一番とか一番カルビじゃねえよな?!…ボケさせて!」
正確には…今さっき気付いた。
ボケてでもいないと、驚愕の嵐で意識がどこか飛んで行きそうだ。
「フィギュアが当たるくじでも、ラーメンでも肉でもねえよ!…桃李にとっては、夏輝、何もかもおまえなんだよ」
な、何もかもって…。
「学校の男子の中でも一番は夏輝、近所のおばあちゃんよりも夏輝、パンダのじいちゃんよりも夏輝、お父さんよりも夏輝、俺よりも夏輝、一番信頼できる人は夏輝。とりあえず男の中では一番」
お、俺ばっかり…?
「すべての男の中の一番であり…ようするに、一番好きな人」
嘘…。
全然俺に興味もないと思っていたのに。
俺なんて対象外だと思っていたのに。
「…桃李は、ずっと夏輝のことが好きだったんだ」
こんな大どんでん返し、ある?!
まさか、理人のヤツにハメられているのでは…。
…とは、理人の本気でぶちキレている様子の前では言えない。
思わず絶句してしまい、お互い喋らず、シーンと静かになってしまう。
しばらくして、理人はおもいっきり大きいため息を吐いた。
「…こんなこと、俺の口から言うのはフェアじゃないと思ったよ。あー。言っちゃった…」
俺だって…まさか、おまえの口からそんなことを聞かされるとは思わなかったよ。