王子様とブーランジェール




何の情報って?理人が言ったことそのまま…。



「ムカつく!…すっげぇムカつく!何そのボケ?マジな話をしてんのに、ボケいらないんだけど!」

…ボケ?!誰が…!

「ボケ…ボケてるつもりはねえ!」

「俺は『桃李にとって夏輝は一番だからな』って言ったのに、何が恐い男だよ!どこから出てきた恐い男!」

「それは、話の流れ…えっ」

間違いに気付いて、急に勢い死んだ。



桃李にとって、夏輝は一番。



…ホントだ。恐い男、出て来てない。



しかし、恐い男よりも重大事項に気付いてしまった。

心臓、口から飛び出るくらい、ヤバい事項。



「い、一番って…何の一番?」




俺、桃李の一番?

何の一番?

俺、桃李の一番になれる何か、あったっけ?



もしや。それは…。

…あぁっ!


気付いてしまったら、一気に照れが襲ってきた。



「ち、ちょっと…」

「…その様子だと、気付いてんだろが…ボケはいらねえぞ?」

「一番くじクラブとか、さっぽろ一番とか一番カルビじゃねえよな?!…ボケさせて!」



正確には…今さっき気付いた。

ボケてでもいないと、驚愕の嵐で意識がどこか飛んで行きそうだ。



「フィギュアが当たるくじでも、ラーメンでも肉でもねえよ!…桃李にとっては、夏輝、何もかもおまえなんだよ」



な、何もかもって…。



「学校の男子の中でも一番は夏輝、近所のおばあちゃんよりも夏輝、パンダのじいちゃんよりも夏輝、お父さんよりも夏輝、俺よりも夏輝、一番信頼できる人は夏輝。とりあえず男の中では一番」



お、俺ばっかり…?




「すべての男の中の一番であり…ようするに、一番好きな人」



嘘…。

全然俺に興味もないと思っていたのに。

俺なんて対象外だと思っていたのに。



「…桃李は、ずっと夏輝のことが好きだったんだ」



こんな大どんでん返し、ある?!



まさか、理人のヤツにハメられているのでは…。

…とは、理人の本気でぶちキレている様子の前では言えない。



思わず絶句してしまい、お互い喋らず、シーンと静かになってしまう。



しばらくして、理人はおもいっきり大きいため息を吐いた。



「…こんなこと、俺の口から言うのはフェアじゃないと思ったよ。あー。言っちゃった…」



俺だって…まさか、おまえの口からそんなことを聞かされるとは思わなかったよ。



< 740 / 948 >

この作品をシェア

pagetop