王子様とブーランジェール




「だいたい、謝る謝るとか言ってっけど、桃李が絶対許してくれるの、わかってんだろ?だから謝るんだろ?!『ごめんなさーい!てへぺろー』みたいな?!」

「…ふ、ふざけんなよ!そんなふざけた謝りかたせんわ!誠心誠意込めて謝るに決まってんだろ!何がてへぺろーだ!てへぺろー」

「負ける勝負はしないくせに!だから5年間もうじうじしてるんだろ?このチキンが!何、てへぺろー気に入って何回も言ってんだ?!」

「気に入ってねえし?!二回しか言ってねえよ!コラァ!…負ける勝負はしない?俺だってやるときゃやるさ!」

「じゃあ、いつやってくれんだよ!昔みたいに『地球が三回回ったら…』とか言うんじゃないだろうな?…5年間で地球何回回ってんだよ!」

「地球が何回回ろうが、俺には俺なりの事情があんだよ!いたいけな純情少年の事情がなぁ?」

「ぶっ…笑わせてくれるよな?!…いたいけな純情少年?誰が!…ヤリたいがために他に彼女作ってたヤツの、どーこが純情少年だよ!」

「宮下先輩の他、おおっぴらにセフレがいるおまえに言われたくないですよー?純情のかけらもありゃしない!てへぺろー?」

「てへぺろー?気に入りすぎじゃね?」



次第に、互いの距離が近付き。

手が届くほどになると、ヤンキーのケンカのように、顔を突き合わせ、互いの肩をどつき合っていた。



「だいたい、桃李のことが好きなのに、他に彼女作るとかよく出来るよな?…本当に桃李のこと好きなのか?」

「…は?」

「…意地で引っ込みつかなくなってるだけじゃね?」

「…んだと!」

「もう、いいんじゃねえの?…女に困ってないしょ。わざわざ桃李じゃなくても」



…ここ一番で、イラッときた。



本当に好きなのか…?

意地で引っ込みつかなくなってる…?

女に困ってない…?

わざわざ桃李じゃなくても…いいだろ?と、言いたいのか…?



言われたことを頭でリピートされればされるほど、イライラが募ってくる。

爆発するように腹の底から声が出た。



「…ふざけんなよ!!」



そして、理人の肩をどつく。



「俺は…俺はアイツじゃなきゃ嫌なんだ!」



…ふざけろよ?

引っ込みがつかないとか、意地だとか、そんな問題じゃない。

俺は、わざわざ…桃李がいいんだ。



それは、変わらず胸を張って言える。

もう、迷わないって。



「…俺は!…アイツがいいんだ!…わかってるとは思ってたけどなぁ?あぁ?…今さら何ぬかしてんだこのバカヤローが!」



< 742 / 948 >

この作品をシェア

pagetop