王子様とブーランジェール
「だいたい、謝る謝るとか言ってっけど、桃李が絶対許してくれるの、わかってんだろ?だから謝るんだろ?!『ごめんなさーい!てへぺろー』みたいな?!」
「…ふ、ふざけんなよ!そんなふざけた謝りかたせんわ!誠心誠意込めて謝るに決まってんだろ!何がてへぺろーだ!てへぺろー」
「負ける勝負はしないくせに!だから5年間もうじうじしてるんだろ?このチキンが!何、てへぺろー気に入って何回も言ってんだ?!」
「気に入ってねえし?!二回しか言ってねえよ!コラァ!…負ける勝負はしない?俺だってやるときゃやるさ!」
「じゃあ、いつやってくれんだよ!昔みたいに『地球が三回回ったら…』とか言うんじゃないだろうな?…5年間で地球何回回ってんだよ!」
「地球が何回回ろうが、俺には俺なりの事情があんだよ!いたいけな純情少年の事情がなぁ?」
「ぶっ…笑わせてくれるよな?!…いたいけな純情少年?誰が!…ヤリたいがために他に彼女作ってたヤツの、どーこが純情少年だよ!」
「宮下先輩の他、おおっぴらにセフレがいるおまえに言われたくないですよー?純情のかけらもありゃしない!てへぺろー?」
「てへぺろー?気に入りすぎじゃね?」
次第に、互いの距離が近付き。
手が届くほどになると、ヤンキーのケンカのように、顔を突き合わせ、互いの肩をどつき合っていた。
「だいたい、桃李のことが好きなのに、他に彼女作るとかよく出来るよな?…本当に桃李のこと好きなのか?」
「…は?」
「…意地で引っ込みつかなくなってるだけじゃね?」
「…んだと!」
「もう、いいんじゃねえの?…女に困ってないしょ。わざわざ桃李じゃなくても」
…ここ一番で、イラッときた。
本当に好きなのか…?
意地で引っ込みつかなくなってる…?
女に困ってない…?
わざわざ桃李じゃなくても…いいだろ?と、言いたいのか…?
言われたことを頭でリピートされればされるほど、イライラが募ってくる。
爆発するように腹の底から声が出た。
「…ふざけんなよ!!」
そして、理人の肩をどつく。
「俺は…俺はアイツじゃなきゃ嫌なんだ!」
…ふざけろよ?
引っ込みがつかないとか、意地だとか、そんな問題じゃない。
俺は、わざわざ…桃李がいいんだ。
それは、変わらず胸を張って言える。
もう、迷わないって。
「…俺は!…アイツがいいんだ!…わかってるとは思ってたけどなぁ?あぁ?…今さら何ぬかしてんだこのバカヤローが!」