王子様とブーランジェール


『…それにしても、嵐のヤツ。腹立つわねー。堂々と一年生の教室入ってくなんて、ミスターたち卒業したからって調子に乗って…』

律子さんは、この嵐さんの話題になると、急に不機嫌になる。

昨日の教室の件…私も落ち込んでしまう。

すると、松嶋くん…と、呼んだら『呼び捨てでいーよ』と言われたので、松嶋と呼ぶことにした。

松嶋も、ちょっと面白くない顔をした。

『俺的には竜堂のあの態度はナイねー。あれ、あの時だけじゃなく、今までも桃李に結構ツラく当たってるでしょー。見てて切ないわー。…同中だっけ?』

『うん。小学校から一緒なの』

『…え?何?桃李、そんな仕打ち受けてんの?!その竜堂も許せない!…さすが、あの嵐に落とされた男よね?!バカ!バカよ!色気にやられたんでしょ?きっと!』

『あ…』

『で、ちょっとイケメンでちやほやされて調子に乗ってるとか?…あぁーっ!そういう男、許せない!で、こんな可愛い桃李をイジメるとか、あり得ないんだから!』


あはは…何か、この夏輝をディスるノリ、秋緒と理人にそっくり。

今までは、夏輝をディスる人はあの二人しかいなかった。

この二人、あの二人と気が合うかも。






『嵐と竜堂、お似合いのバカップルなのよ?…これ、見て!』

『ん?何?』



律子さんは、カバンの横に置いてあったサブバッグ的紙袋から、あるものを取り出した。

それは、A4サイズのパネル。

どうやら、写真を引き延ばしてパネルにしたようだ。



その写真が問題だった。

これ…!



『…おいおい。律子さんや。これはなんだい』

松嶋は苦笑いする。

『これ、美梨也から貰ったの。慎吾に見せたら捨てようとは思ってたけど』

『うん。別に。見たら捨てるか』

『………』



それは、あの二人。

夏輝と、昨日の女の人の写真だった。

夏輝が、女の人におぶらさってる写真。

夏輝が後ろから…女の人を抱き締めているというシーンに見えなくもない写真だ。



やっぱり、王子様には必ず、綺麗なお姫様が隣にいる。



また、胸が痛む。




『おいおい。律子さんや。これひょっとして…あのハメ酒直前の写真か?竜堂ぐったりしてるし、ラブホテルの前だぞこりゃ。いったい誰が取ったんだっつーの』

『むっふー。イブっち。すすきの巡回中に、嵐を発見したんだって』

『伊武さん?うわぁー。残党、エグい。で、パネルにしたのは美梨也さん?すげー』



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