王子様とブーランジェール
「身長…伸びんの?」
なぜ身長を伸ばすことが必要なのかは、わからないが。
そのネタに乗っかるつもりも全然ないんだが。
とりあえず、恐る恐るその詳細を聞いてみる。
「うん!」
ヤツは即答した。
自信満々ではっきりと答えている。
「あのね、あのねっ。セノビールココア飲んでるの。あと、整骨院にも通うの。膝伸ばして成長促すんだって」
背伸びるココア…?
「………」
「あ、あと、小魚とカルシウムウエハース食べるの。ストレッチもするの」
「………」
マジで呆れた…。
成長促す…女子の成長期、高校生ならとっくに終わってんだろ。
俺は、夏にも身長2㎝伸びたけど。
ヤツは中学生の早い時期から、身長は伸びずに止まってるはずだ。
こっちに転校してきた時は、あれだけ小人だったんだ。だいぶ成長した方だと思うけど。
しかも、一点の疑いもなく、真剣に答えているあたりがもうネタだ。
やっていることは、アスリートを目指す成長期の小中学生…!
「…あと、何㎝伸ばすつもりなのよ」
「最低6㎝…」
「………」
あと最低6㎝?
それ、マジで成長期のレベルだぞ?
まさか…本当にアスリートを目指してるんじゃねえだろな?
俺にふさわしい人間を目指す…んだよな?
(………)
…なぜ、身長を伸ばしたいのかは知らん。
人は誰もが、理想のイメージ像を持ってるからな?
だが…。
なぜそれが、あの告白を無しにする理由なのかは、さっぱりわからない…!
バカの思考回路を理解出来ないせいか。
久々に、イラッとさせられた。
だが、そのイライラを抑えて質問を続ける。
「…で、結果はどうなんだ。身長伸びてるのか?」
「あ、いや、まだ少しも…でも、頑張ってるよっ」
…だろうな。
今からそんなに伸びるもんか。
「頑張ってるよっ」に、少し萌えキュンしてしまった自分が恨めしい。
「…おまえ、生理きてるよな?女子って大体生理きたら身長止まる…」
「な、何聞くのっ…やややや…」
不信そうな目で見られ、一歩後退りされた。
「………」
いや、いやいや。
いやらしい意味で、そういうことを聞いたんじゃなくて。
世の中一般の知識を伝えようと俺は…!
「………」
無言でこっちをジトッと見ている。
何だそのイタイものを見るような目は…あぁっ!