先生。



司はお風呂に入ってから行くと、だから私は先に向かった。



そして先生の家の玄関の前。



平日の昼間だし、あの女も先生も誰もいない。


わかっているけど、なぜか手が震える。



そんな手で意を決して、合鍵を差し込んで玄関を開けた。



先生の家ってね、玄関からリビングがすぐ見えるの。


神様って本当に意地悪だよね。





「…おかえり」





近くにいるのに遠く感じる。


声が、遠くに聞こえる。





「俺に許可なく無断外泊?いい度胸してんじゃん」





玄関を入った瞬間にダイレクトに伝わってきた、タバコの匂い。


リビングに行くと、灰皿に入りきらないほどの吸い殻。



会いたくないって心の底から思ってたのに、顔を見れば胸が苦しくて好きばっかり積もる。

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