先生。


唇が離れた距離、すごく近い距離で、私はそう言った。



もう、涙はたくさん溢れていたのかもしれない。


でも私はそれに気づけないほど、視界と感覚には今先生しかいないんだよ。





「へえ、そっか」





こんなにも我慢して、こんなにも傷ついて。


こんなにも苦しいのに。



…なのに先生は、簡単にまた私を期待させる。





「…俺は耐えられないよ。1日も」





甘い声で、優しい声でそう言うの。





「早く俺んとこ戻ってきなよ。俺が寂しがりやなの知ってるでしょ?」





ズルイって、そんな言葉じゃ足りない。


何もかもわかってて、見透かされてて。



私はもうとっくに…




その時、ポケットの中のケータイが通知を知らせた。


その一瞬で、私たちを囲む空気が壊れる。

< 167 / 399 >

この作品をシェア

pagetop