先生。


ソッと呟いたその言葉に、嘘や冷やかしはなかった。





「あの子は、私のたった1人の私の娘なの。潤は嫌がるけどね。だけど…幸せを願うくらい…いいでしょ?」





泣いた顔なんて初めて見たかもしれない。



多分この女は気付いてないんだろうな。


今、母親の顔してるって事。





「ちゃんと母親してんじゃん?潤には伝わってないけどさ」


「それでもいいのよ。少し離れたところであの子を見ていられれば」





本当は怖かったのかもしれない。



潤の幸せを聞いた時に、そこに俺がいなかったらって。


潤の幸せをちゃんと考えてなかったのは、俺だな…きっと。





「私の可愛い娘泣かしたら許さないからね」





そんな言葉にフッと笑って、俺はバーを出た。

< 371 / 399 >

この作品をシェア

pagetop