【短】好きすぎてむかつく (男目線)


「泣くか怒るか、どっちかにすれば?」


泣くか…って。


うわ、俺、また、泣いてた。


「わたしの制服汚さないでよ」


ミーがそう言ったから、俺はミーから離れて涙をぬぐった。


泣いてるところ見られるとか、終わった。


どれだけ自分がガキなのか思い知らされる。


音大に通ってるあんな大人っぽいやつに、俺がかなうわけ──


「いいよ」


ミーはピアノに向けている体を俺に向けた。


「…え?」


「アンタと付き合ってもいいよ」


ミーが……とてつもなく信じられないことを言っている気がする。


そして、とてつもなく俺が喜ぶことを。


「正直、アンタのこと好きじゃない。でも、そーゆー感情豊かなところ、嫌いじゃないよ。だから、アンタと付き合えば、わたしも感情豊かになれるかも」


「ま…じで言ってんの?」


俺のこと好きじゃないっていうのは…一瞬、グサッてなったけど。


「み、ミツキってやつのことが、好きなんじゃねえの?」


そうだ、そういえばそうだった。


「ミツキさん?そりゃ、好きだけど…恋愛としてじゃないよ、ピアノの先輩として、憧れてるだけ」


「…」


もしかしてあのポーッとしてたのは…演奏に、惹かれてた、だけ?


うわ…まじかよ。


俺、早とちりだわ。


ばかかよ。

< 19 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop