向日葵だけが知っている
お姉ちゃんが先に出ると、家には私とお母さんだけが残った。
「ひまり、演劇部入ったのね。」
「うん。先輩もいい人で楽しいよ。」

「それならよかった。でも…大丈夫?」

お母さんが顔を曇らせる。
「何が?」

「ひまり、あんまり人前に立ってしゃべる人じゃないでしょ。舞台なんて大丈夫?…さくらだったら安心だけど、ひまりだから…」


「っ…」

ヤバい、涙が出そう。
私はとっさにバッグをつかむと言った。
「ごめん、そろそろ学校いくね。」
「はーい。気をつけてね。」

返事はしなかった。

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