先生はめんどくさがり。


全てにイライラした。



女の人の方に回っている先生の手も、呼ばれている下の名前も、知らない人の隣で安心して眠っている先生にも。





「あのっ…譲さんが、酔っていて1人じゃ帰れなかったのでっ」


「すみません。ありがとうございます」





本当は触れてほしくない。


触らないで。



そう言いたいのに、私は我慢して笑顔を作る。





「起きて」


「んー…」





先生を受け取ると、私にギュッと抱きついてくる。


だから、私の不安はすぐに飛んで行ってしまうんだ。





「歩ける?」


「ん…」





そう言うと、先生は靴を脱いで家の中に入っていった。





「申し訳ございませんでした。失礼します」





私は送ってくれた女の人に頭を下げて、扉を閉めようとした。

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