次期社長と訳あり偽装恋愛
「ありがとう。こうして梨音ちゃんと話をしているだけで癒されるよ。俺としてはイチャイチャした方がもっと癒されるけどね」
いたずらっ子のような顔をして言う。
言葉ではそんなことを言っているけど、本当に疲れているように見えた。
私は無意識のうちに目の前の立花さんの身体にギュッと抱きついた。
「どうしたの?」
私の突然の行動に驚きの声を出す。
「少しでも癒されるかなと思って」
「あー、もう!可愛い事ばかりしないでよ。押し倒したくなるから」
立花さんは私の身体を強く抱きしめた。
「社内恋愛の醍醐味とは言ったけど、さすがにここでキスは出来ないよな」
我慢するか、なんて呟く声が耳に届いた。
冷静に考えると、私から抱きつくとかとんでもないことをしているんじゃ……。
ハッとして立花さんの胸を押し、距離を取ろうとした。
「もう離れるの?俺的にはあと少しこのままでもよかったけど」
「いえ、そういう訳には……」
誰も見ていないかキョロキョロと周りを見回した。
私の様子を見て、立花さんはクスッと笑う。
「心配しなくても誰も見てないから大丈夫だよ。今度こそ、仕事に戻るよ」
じゃあ、と私の頭を優しく撫でて休憩スペースを後にした。