次期社長と訳あり偽装恋愛
金曜日、『フレッシュスター』でぶどうジュースを買って出社した。
皮ごとミックスされているので、栄養素を余すことなく堪能できる。
席に座り、ジュースを飲んで一息つきながら卓上カレンダーに視線を向けた。
立花さんは水曜から泊まりの出張に行っている。
大型イベントにうちの商品を出展することが決まり、その準備などで忙しくしている。
だから、立花さんの分のお弁当も晩ご飯も必要ない。
「寂しいな……」
ポツリ、本音がこぼれ落ちる。
「何が寂しいんだ?」
宮沢が不思議そうな顔をして聞いてくる。
口に出したつもりはなかったけど、思っていたことを発していたみたいだ。
「いや、何でもないよ。それより、今日は作戦決行だからね」
内心、焦っているけど平静を装い話題を変える。
今日の夜に玲奈と宮沢の三人で飲み行く約束をした。
私は急に用事が出来て行けなくなったとドタキャンすることになっている。
「あぁ」
いつもより表情が固く、緊張しているのが手に取るように分かる。
「大丈夫?飲み過ぎてヘマしないようにね」
「分かってるよ。全く、他人事だと思って」
ブツブツと呟く。
「他人事だなんて思ってないよ。何のために協力してると思ってるの?二人が上手くいけばいいなと思ってるからだよ!」
「お、おう。ありがと」
私の勢いに驚いたのか、宮沢は引き気味に答えた。