次期社長と訳あり偽装恋愛
「えっ、あの、頭を上げてください。私なら大丈夫です」
「和志、梨音ちゃんもそう言ってくれているんだ。頭を上げなさい」
「大丈夫な訳ないだろ。親父のせいで梨音ちゃんに辛い思いをさせた挙げ句、俺たちは別れることになったんだぞ。俺はそのことに納得はしてなかったけど」
立花さんは憤慨したように言う。
「翔真、まぁ落ち着きなさい。和志、梨音ちゃんは本当にいい子なんだよ。わしが趣味で植えている花に興味を持ってくれたり、蛍光灯を交換するために脚立に乗っていたらそれを支えてくれたり。他の社員なんか見向きもせん。そういった気遣いの出来る子なんだ。まさか、翔真と付き合っているとは思わなかったけどな。翔真、グッジョブだ!」
しげさんは立花さんに向かって親指を立てる。
「じいちゃん……」
「それに、梨音ちゃんには結婚式のブーケのリクエストも聞いているからな」
結婚式のブーケのリクエストって?
私が首を傾げていたら、しげさんはニッコリ笑った。
「かすみ草とガーベラが好きなんじゃろ。それらを取り入れたブーケを作ってもらう予定だよ」
「あっ……」
そういえば、どんな花が好きか聞かれたことがある。
会話の一部、ほんの些細なことを覚えてくれていたなんて思わなかった。
でも、結婚式のブーケとかそんなつもりで話していないし、話が飛びすぎな気がするんだけど。