次期社長と訳あり偽装恋愛

「だったら母さんに言われたらマズイことをするなよ」

「すまない」

「謝らないといけないのは俺じゃなくて梨音ちゃんだろう。それに母さん、親父が仕事ばかりでどこにも連れていってくれないって愚痴ってたぞ。休みの日ぐらい母さんと出掛けてあげなよ」

「そうだな……」

社長は小さく笑った。
あんな穏やかに笑う人なんだ。

社長の意外な姿を目の当たりにして驚いていたら、しげさんが立ち上がって私のそばに来るとこっそり耳打ちした。

「和志は洋子さん、翔真の母親には頭が上がらないんだよ。偉そうな社長も形無しだろう」

まさか社長の家がかかあ天下だとは思わなかった。

「翔真。ここを使っていいから梨音ちゃんと話をしなさい。和志、わしらは席を外そうか」

「そうですね。河野さん、私の身勝手な言動で君に辛い思いをさせてしまい本当にすまなかった。許して欲しいと言うのはおこがましいけど、私から一言だけ。翔真のことをよろしくお願いします」

「こ、こちらこそよろしくお願いします」

社長が頭を下げ、私も慌てて立ち上がって頭を下げた。

「ほら、二人とも顔を上げて。あとは若い二人に任せよう」

そう言ってしげさんは、社長と亀井さんと一緒に社長室を出て行った。
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