次期社長と訳あり偽装恋愛

静まり返った社長室には私と立花さんの二人だけ。
いろんなことがありすぎて、何から話をすれば分からない。
とりあえず立花さんと銀行の娘さんとの縁談はなくなったんだよね。
じゃあ、私たちはどうなるんだろう。
別れなくてもいいのかな?
でも、そんな都合よくはいかないし……。

「何から説明すればいいか分からないんだけど、俺は梨音ちゃんと別れたつもりはないから」

グルグルと一人で考えていたら、立花さんがおもむろに話し始めた内容に「えっ?」と疑問符を浮かべた。

そういえば、さっきも別れることに納得していないとか言っていた。
でも、私が付き合いを終わりにしようと伝えたら、立花さんは「そうか」と言ってその場を立ち去った。
あれは了承したという意味じゃないんだろうか。

「君から終わりにしようと言われた時、本当は反論したかった。でも、親父との間で何も解決していない状態でそんなことを言っても説得力に欠ける。だから、まず親父と話すことを優先した。時間がかかっても、親父を説得して梨音ちゃんに会いに行く予定だった。別れることに納得した訳じゃない」

私の考えを見透かしたように立花さんは言う。

「本当はもっと早く会いに行きたかったんだけど、親父も忙しくしている人だからなかなか都合がつかなくて。やっと昨日、実家に行って話をしてきたんだ」

そういえば、しげさんが立花さんと社長が昨日、話をしたと言っていた。
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